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飛行機の雷対策

飛行機は雷を受けても大丈夫

乗っている飛行機に雷が落ちたらどうなってしまうのか、だれでも不安になると思います。窓の外に稲妻が走っているのを見たりしたら、生きた心地はしませんよね。
でも安心してください。現代の飛行機は少しくらい雷が落ちても大丈夫なように、ちゃんと安全を考えて設計されています。
パイロットがわざと危険な積乱雲に突っ込み、激しい雷を何度も繰り返し受ければ話は別ですが、そんなことは有り得ないので心配要りません。

ただし、落雷後に修理が必要になることは良くあります。また、修理作業に時間が掛かるため、次の便が遅れたり欠航になってしまうこともあります。
日本のみならず、飛行機は常に世界各地で雷を受けています。しかし、飛行中の落雷が直接の原因で、大きな事故につながることは世界的にも稀です。



雷に対する飛行機の工夫

まず飛行機に落ちた雷は、金属製で電気抵抗が少なく電気の流れやすい機体構造部、つまり胴体を通過しようとします。
そのために胴体の内側に座っている、電気抵抗の大きい人間には流れません。これは自動車に落雷したときと同じ理屈です。

例えば、人間に電気が流れるためには、電流は一度胴体から空中に飛び出し、そして人間を通過した後、再び飛行機の胴体に戻らねばなりません。もしくはその逆に、飛行機の胴体から人間へ流れ、その後人間から空中を通ってまた胴体へ戻るかです。
空気は最も電気抵抗の大きい絶縁体でもあります。ですから、わざわざ電気抵抗の小さい胴体から電気抵抗の大きい空中に飛び出したり、同じく電気抵抗の大きい人間を通って電気が流れることはありません。
そのために人間だけでなく、搭載している貨物や飛行機のコンピューターなども、感電することは無いのです。

しかし、飛行機に取り付けられている部品の中で、雷の通り道にあっても電気抵抗が高くなる部品があります。
ボルトやリベット、溶接などでしっかり構造部に密着している所は、電気抵抗が非常に小さいのですが、ヒンジで機体とつながっている可動部は電気抵抗が大きくなってしまうのです。
飛行機の機種によって違いますが、動翼、タイヤの格納ドア、貨物室や整備用のドア、点検用のパネルなどがあります。

それ以外にも、たとえしっかり固定されていても、電気抵抗が大きくなってしまう部品もあります。
そういった接触面の電気抵抗が大きい部分は、大電気が流れると発熱し、焼けたり溶けたりする可能性があります。そして、もし溶けた金属部分が冷えると、溶接したのと同じ状態で可動部分がくっついたり、形状が変わって正常に動かなくなります。

もしヒンジがくっついてドアが開かなくなったり、タイヤが出なくなったら大変です。
そのために、先程の電気抵抗が大きい所は太い電線のようなものでつなぎ、電流がスムーズに流れるように工夫しています。


白い筋がライトニング ストリップ
それ以外にも同じような理由で、電流をスムーズに流す対策が採られている箇所があります。
飛行機の一番前の丸い部分、鼻のようになっている所がありますよね。この丸い鼻の部分は「レドーム」と言います。レドームはドアのように開けることができて、中には気象レーダーや航法用のアンテナが入っています。材質は非金属の複合材でできています。

レドームは飛行機の先端のため、雷の落ちやすい所の一つです。
もしここに雷が落ちたら、材質が非金属で電気抵抗が大きいため、大電流により破損してしまいます。レドームの中には大事な物が入っているし、何しろ飛行機の先端にあるので、これが破壊されると安全な飛行に影響します。

そのため、もしレドームに落雷しても電流を機体側へスムーズに流し、なるべく被害を軽くするために電気の通り道が作ってあります。
レドームを良く見ると、筋のような物が何本か前後に走っていると思います。
これが電気の通り道で「ライトニング ストリップ」と言い、棒状の金属でできていて電気を機体側へスムーズに流せます。
これは外から見ることができますので、機会があれば観察してみてください。
次のページでは、実際に雷が落ちたらどうなるか見てみます。



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