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火山灰で飛行機が削れる?

ヤスリと同じ火山灰

空高く舞い上がった火山灰には、砕けた細かい岩石や鉱物の結晶がたくさん含まれています。
下の写真が火山灰の拡大写真です。灰と言うよりは、むしろ石を細かく砕いた粒と言った方が正解のようですね。
それらの一粒一粒はとても微細なのですが、岩石や鉱物なのでとても硬いものです。その点が同じ灰でも、木や紙が燃えた後に残った灰と全く違うところです。

火山灰のクローズアップ写真
どんなに細かい粒子でも硬ければ、高速でぶつかると衝突した部分は侵食します。
この理屈を用いたものに、工業用に用いられるサンドブラストという加工方法があります。
これは細かな砂粒を金属製品に高速で吹きつけることにより、製品の表面を成型する加工技法です。言わば、細かい砂粒でヤスリがけをしているのと同じです。

ご覧のように、火山灰もサンドブラストに用いる砂粒と同じような、硬い粒子の集まりです。
ですから、これが高速でぶつかれば衝突面に何らかの影響が出ます。
でも、一見火山灰はモクモクとした柔らかそうな雲のなのに、なぜ飛行機は損傷を受けることになってしまうのでしょうか。次に、飛行機は火山灰からどんな影響を受けるか見てみます。



飛行機のヤスリがけ

飛行機が巡航飛行しているときの速度は、マッハ0.7〜0.8、時速にして約850〜900kmくらいの高速です。(機種や飛行条件によって異なります。)
飛行機がこのような高速で火山灰に突っ込むと、まさにサンドブラスト加工をしているのと同じ状態になります。つまり、飛行機に火山灰の粒子がぶつかる部分全てが侵食され、ザラザラに削れてしまうのです。
具体的には機首前方、主翼、尾翼、アンテナ、エンジンの空気取入れ口やブレードなど、飛行機に空気が垂直に当たるところ全てです。
特にエンジンの中で高速で回転しているブレードは、とりわけ侵食による損傷がひどくなります。

しかし、もっとも侵食の影響が大きく、安全な飛行に支障が出るのはコクピットの窓です。

飛行機のコクピットの窓は大きな鳥がぶつかっても割れないよう、多層構造でとても丈夫に作られています。しかしながら、表面を鋭い物で引っかいたりこすると、細かい傷ができてしまいます。
そう、コクピットの窓に高速で火山灰がぶつかると、表面が傷ついてしまうのです。まるでサンドペーパーをかけたようにザラザラになり、スリガラスと化してしまいます。そうなると当然、パイロットは前方が全く見えなくなります。

コクピットから外が見えなくても、高いところを巡航している間はあまり支障がありません。計器飛行をしたり、自動操縦をしたり、場合によっては地上の管制官がレーダーで誘導してくれるからです。
もっとも、飛行機が雲の中や夜間を飛んでいるときは、外を見ても何も見えませんよね。

問題は飛行高度が低い時や、空港への着陸時です。
ある程度、空港の近くまでなら飛行機の計器を見て、もしくは自動着陸装置を使って滑走路へ進入できます。でも、やはり最後はパイロットが自分の目で周りを見ながら、飛行機を着陸させなければなりません。
前ページで紹介したブリティッシュ・エアウェイズ機の場合も、やはりコクピットの窓はスリガラス状になり前が見えなくなりました。でも、わずかに前方が見えるところが残っていたため、そこから覗き込むようにして、かろうじて着陸できたそうです。
このような飛行機に対する侵食も、火山灰に遭遇すると危険な理由の一つです。



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